エストロゲンを増やすには?生活から医療まで網羅的に解説

フェムケア入門・コラム

エストロゲンの減少は、更年期に差し掛かる女性にとって大きな悩みです。ただし、エストロゲンそのものを増やすことは生理学的に困難で、特に女性ホルモンの減少が加速する時期からはこうした状態を踏まえて心身のバランスを整えることが重要となります。

本記事では、エストロゲンの役割や減少によってどのような影響があるのか解説し、心身を整えるためのポイントをご紹介します。

エストロゲンとは?役割と減少による影響

まずは、エストロゲンの役割や心身への影響について確認してみましょう。

エストロゲンの働き

エストロゲン(卵胞ホルモン)は、卵巣から分泌される女性ホルモンの1種です。妊娠の準備をするために子宮内膜を増殖させたり、乳房を発達させて女性らしい身体づくりをするだけでなく、骨量やコレステロールのバランス、自律神経の安定にも影響しています。

女性ホルモンとは、おもに卵巣から分泌される「エストロゲン」と「プロゲステロン」のことを指します。この2つのホルモンは排卵や月経をコントロールするだけでなく女性の心身に大きく影響しています。

引用:働く女性の心とからだの応援サイト

エストロゲンが減ると起こること

更年期になると、女性ホルモンが減少していきます。症状には個人差がありますが、エストロゲンの減少によって以下のような変化や病気のリスクが出現することも珍しくありません。

・ホットフラッシュ
・動悸
・睡眠障害
・生活習慣病
・骨粗しょう症
・認知症 など

更年期になると、女性ホルモンの減少による症状が多くなります。日常生活に影響を及ぼすような「更年期障害」ほどではないけれど、肩こり、ホットフラッシュ、動悸、睡眠障害など、更年期による様々な不調を感じる人は多いです。さらに更年期以降は、生活習慣病、骨粗しょう症や認知症など、男性より女性がかかりやすくなる病気があります。
引用:働く女性の心とからだの応援サイト

エストロゲンを“増やす”のは不可能? 正しく理解しましょう

減ってしまうエストロゲンには、どのように対処すればよいのでしょうか。正しく理解し、自分にとってベストな対処を見つけていきましょう。

分泌量は増やせない:年齢とともに自然減少する性質

エストロゲンの分泌量は、加齢に伴い自然減少します。努力によって食い止めることはできず、生活習慣やサプリメントで分泌量を増やすこともできません。

重要なのは「バランスを整える」アプローチ

エストロゲンの減少による不調を和らげる上で重要なのは、エストロゲンを増やそうとするのではなく、減少に伴い発生しやすくなる不調の改善に目を向けることです。

不調の原因は、1つではありません。確かに、エストロゲンの減少が要因の1つになることもありますが、他の要因も複雑に絡んでいることの方が多いです。食事や運動、睡眠の改善でホルモンバランスを整えることによって、不調が和らいだり改善することも多々あります。

医学的アプローチ:HRTと漢方の役割

エストロゲンの減少は自然なことであり、増やすことはできないとご紹介しました。しかし、以下の方法によって、エストロゲンを補充したりホルモンバランスを整えたりすることも可能です。

ホルモン補充療法(HRT)

HRTは、医師の管理下でエストロゲンを補充する治療法です。内服薬や貼り薬、塗り薬、腟座薬などの種類があります。ホットフラッシュ症状の緩和や骨折の予防、脂質代謝の改善、腟の萎縮症状などに効果があるとされていますが、リスクもあるため医師と相談が必要です。

女性ホルモンの減少がおもな原因のひとつである更年期症状の症状の緩和のためには、減ったホルモンを補充するホルモン補充療法(HRT)が効果を発揮します。特に、のぼせ、ほてり、発汗といったホットフラッシュ症状に対して有効です。
引用:女性の健康推進室 ヘルスケアラボ

漢方の位置づけ

女性ホルモンのバランスを整えて不調の改善につなげるために、漢方もよく使われています。漢方はあくまでもホルモンバランスを整える補完的なアプローチとして捉えられていますが、一人ひとりの体質や症状に合わせて処方されるため上手に活用している人も多いです。

食事でできること:自然なアプローチ

 

エストロゲンの減少の影響をできるだけ緩やかにしたい場合は、食事にも気を配るのがおすすめです。特に、以下のポイントに注意してみてはいかがでしょうか。

大豆イソフラボンとエクオール

大豆、特に大豆胚芽に多く含まれる大豆イソフラボンは、エストロゲンに似た分子構造をしていることから、植物性エストロゲンと呼ばれることもあります。体内でエクオールに変換され、エストロゲンに似た穏やかな作用を発揮します。

大豆イソフラボンアグリコンは、分子構造がヒトのエストロゲン(女性ホルモン)に似ているため、エストロゲンに似た作用を生じることが知られています。
引用:厚生労働省

腸内環境を整える

女性ホルモンに似た働きをする「エクオール」は、腸内細菌のエクオール産生菌によって大豆イソフラボンから変換されます。そのため、腸内環境が乱れると、エクオール産生菌がうまく活動できず、十分な産出ができません。

発酵食品や食物繊維を多く含む食材を積極的に摂取したり、ストレスを溜めない生活を心がけたりすることで、腸内環境の改善が期待できます。

その他の食品

植物性エストロゲンは、大豆や大豆製品だけでなく、ベリー類やナッツ類、全粒穀物などにも含まれます。こうした食材も日頃の献立に補完的に取り入れる価値もあるでしょう。

生活習慣でサポート

ホルモンバランスを安定させることは、女性ホルモン減少に伴う不調の緩和に役立ちます。以下の生活習慣も意識してみましょう。

・適度な運動
・質の良い睡眠
・ストレスケア

ウォーキングや軽い筋トレなどは、自律神経を整え、間接的にホルモンバランスを安定させます。また、質の高い睡眠はホルモンの調整に不可欠で、ストレスを溜めないためにも重要です。できるだけ毎日同じ時間に寝起きして、質の高い睡眠を確保しましょう。

ストレス過多はホルモンバランスの乱れを招きます。ホルモンバランスの乱れは、心身のさまざまな不調を招く要因となります。リラクゼーションや趣味を取り入れましょう。

サプリメントの活用と注意点

エストロゲンの補充として、サプリメントを取り入れようと考える人もいるでしょう。しかし、サプリメントの扱い方や効果については、十分に理解しておく必要があります。

エストロゲンを増やすサプリは存在しない

現時点で、エストロゲンの分泌を直接増加させるサプリはありません。エストロゲンの減少は加齢に伴う自然な減少であり、それを直接食い止めることはできません。

エクオールやハーブサプリ

エストロゲンの減少を補うために、エクオールやハーブサプリなどが用いられることはありますが、効果には個人差があり、リスクも考慮が必要です。

まとめ:エストロゲンは“増やす”のではなく“整える”

エストロゲンは年齢とともに自然に減少するため、直接的に増やすことはできません。エストロゲンの減少に伴って生じやすくなる不調には、HRTや漢方、食事、生活習慣改善などを組み合わせることが有効です。サプリメントは補助的に取り入れる程度に考え、必ず医師・薬剤師に相談しましょう。

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