PMSは、多くの女性が経験する、月経の前に現れる心や身体の不調を指します。その程度や症状の出方は人によって異なり、場合によっては受診が必要なこともあるため注意が必要です。特に、PMDDに該当する場合、放っておかず受診することが推奨されます。
本記事では、PMSやPMDDに関する基礎的な知識、違い、受診の目安などを解説します。月経前に心や身体がつらくなるという方は、ぜひ最後までご覧になってください。
PMSとPMDDとは?まずはそれぞれの定義を確認
PMSとPMDDについて、実はよく知らないという方もいるでしょう。まずは、それぞれの定義をご紹介します。
PMS(月経前症候群)とは
PMSとは「Premenstrual Syndrome」の略で、月経の3〜10日前に現れる身体的・精神的な不調を指します。代表的な症状は、以下のとおりです。
・身体の症状…頭痛、腹痛、腰痛、むくみ、乳房の張り、のぼせ、倦怠感、便秘 など
これらの症状は、月経が始まると軽減または消失するのもPMSの特徴です。
月経前症候群(premenstrual syndrome:PMS)は、月経の前に現れるこころとからだの不調です。さまざまな症状が月経前に3~10日間くらい続きますが、月経が始まると自然に軽快・消失します。
引用:日本産科婦人科学会
日本産科婦人科学会によれば、20〜40代女性の約70〜80%がPMSを経験しているとされます。
日本人女性の70~80%が月経前に何らかの不調を自覚しており、5%は重い月経前症候群で日常生活に困難を感じています。月経前症候群は、特に思春期の女性で多いといわれています。
引用:日本産科婦人科学会
PMDD(月経前不快気分障害)とは
PMDDとは「Premenstrual Dysphoric Disorder」の略で、PMSのうち精神的症状が非常に重く、日常生活に著しい支障をきたす状態を指します。つまり、PMDDはPMSの一部であり、心の症状の程度によっては該当する可能性があるということです。
特にこころの症状が重く、日常生活も困難な場合は、月経前不快気分障害(premenstrual dysphoric disorder : PMDD)と診断されることもあります。
引用:日本産科婦人科学会
PMDDの主な特徴は以下のとおりです。
・極端なイライラ
・怒りっぽさ
・自己否定感
・孤立感
・時に希死念慮
・感情がコントロールできず、社会生活や人間関係に深刻な影響 など
PMDDは、アメリカ精神医学会では精神疾患として分類されており、明確に病名として存在するものです。日本ではあまり認知されていないかもしれませんが、1つの病気として捉えられ治療の対象になります。
PMSとPMDDの違いとは?6つの比較ポイントで解説(表組みで)
PMSとPMDDの違いを、6つのポイントで比較しながらまとめました。
PMS | PMDD | |
原因 | ホルモンの変動や生活習慣などが影響 | PMSと同様だが、精神面への影響が特に強い |
主な症状 | 情緒不安定・体調不良など | 激しい怒り・抑うつ・自己否定・対人トラブル |
症状の程度 | 日常生活には支障が少ない | 仕事・学業・人間関係に支障が出るレベル |
発症率 | 約70〜80%の女性が経験 | 約3〜8%とされる(※諸説あり) |
対処法 | 生活改善・食事・運動・市販薬など | 医療機関の受診が必要なケースが多い |
診断方法 | 基本的に自己判断で対処 | 医師による診断基準に基づく評価が必要 |
こんな人はPMDDの可能性も|受診すべき症状チェックリスト
もし、自分がPMDDかもしれないと思ったら、簡単なチェックをしてみるのも良いでしょう。以下の項目に2つ以上当てはまる場合、PMDDの可能性があるとされています。必要に応じて、婦人科や心療内科の受診をおすすめします。
・感情がコントロールできず、家族や友人と衝突する
・不安や怒りが強すぎて社会生活に支障が出ている
・月経が始まるとウソのように気分が晴れる
・過去にうつ病やパニック障害と診断されたことがある
PMSとPMDDはどう見分ける?セルフチェックと診断の流れ
PMSとPMDDとの見分けや、PMDDと他の病気との見分けは、日々の記録がとても大事な判断基準になります。
1日ごとの感情と症状を記録することが第一歩
PMSとPMDDの違いは「どれだけ日常生活に支障が出ているか」が重要な見分けポイントとなります。まずは以下のような記録を2周期分以上つけてみましょう。
・いつからいつまで続いたか(カレンダー形式で)
・食事・睡眠・人間関係などの状況
日記のような記録が役に立つのか不安になるかもしれません。しかし、おおよその印象を言葉で説明するよりも、毎日の記録がとても役に立ちます。
医師の診断を受ける際に役立つ記録内容とは?
婦人科や精神科では、PMS・PMDDの問診や血液検査に加え、「事前の記録ノート」や「症状日記」が重視され、診断や治療方針の決定に有効な手がかりになります。先ほどご紹介した記録を持参して医師に見せると状態をより詳しく伝えることができるでしょう。
治療法の違いは?生活改善〜薬物療法まで
PMSの治療は、薬による治療と薬を使わず生活改善を行う方法の2通りがあります。医師と相談しながら、自分に合う方法で対処できると、月経に関する悩みごとが減り快適に過ごせる日も増えるでしょう。
PMSの治療法
PMSの代表的な治療法は以下のとおりです。
・カフェイン・糖分の制限
・サプリメント(ビタミンB6・マグネシウムなど)
・漢方薬(加味逍遙散など)
・市販の鎮痛薬(頭痛や腹痛への対応)
PMSとうまく付き合いながら生活するには、気分転換やリラックスできる時間の確保が大切だとされています。症状の特性を知り、予測を立てながら、仕事の量を加減するのも1つの方法です。
また、穀類や野菜といった食物繊維の多い食べ物、カルシウムや亜鉛、マグネシウム、ビタミンB6の摂取はPMSの改善に役立つとされており、意識して献立に取り入れるのもおすすめです。場合によってはサプリメントで補うのも良いでしょう。
一方、糖分(精製された糖・単純炭水化物)やアルコール、カフェインは控えた方が良いとされています。受診をすると、症状や体質に合わせて漢方薬が処方されることもあるでしょう。突発的な頭痛や腹痛に対しては、市販の鎮痛薬を使って症状を抑えるケースもあります。
PMDDの治療法
今のところ、PMDDそのものに対する保険適応の治療はありませんが、心の症状が強く出ていると判断された場合や月経困難症の症状を合併していると判断された場合などは、婦人科や心療内科を受診し保険適用の投薬等で治療できるケースも多いです。
例えば、うつ状態がみられる場合にはSSRI(抗うつ薬)の投与が効果的とされ、PMDDによる心の症状が改善する方もいます。
月経困難症の症状を合併している場合は、低用量ピルの処方でホルモンバランスを安定させ、PMSやPMDDの症状も一緒に改善できる可能性もあります。
これらに加えて、心理カウンセリングや認知行動療法といったアプローチも併用しながら、できるだけ一人ひとりの状態に合った方法で治療が行われています。
まとめ|PMSかPMDDか、まずは自分を知ることから始めよう
PMSやPMDDは、「生理前はみんなこういうものだから」と我慢してしまう人も多いです。しかし、人それぞれ症状の程度や出方は異なり、「みんな一緒」ではないことを十分に理解しておく必要があるでしょう。
つらい症状を一人で抱えて我慢するのではなく、「今月もつらいな」と感じたら、ためらわず婦人科や心療内科を受診しましょう。できるだけ、症状を記録し客観的に振り返れるものを残しておくと便利です。
勇気がいることかもしれませんが、受診することで快適な毎日への第一歩となります。ぜひ、今回ご紹介した内容を参考に、自分の体調を振り返ってみましょう。
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